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好きになってくれる人を好きになれない

私がこの悩みを初めて意識したのは、大学3年生の春でした。サークルの後輩から告白されたとき、胸がざわざわして、なぜか逃げ出したくなったんです。相手は優しくて、誠実で、周りからも「いい人」と評判の男性でした。でも、なぜか心が動かない。むしろ、彼の好意が重く感じられて…

あのとき、初めて気づいたんです。私って、いつも手の届かない人ばかりを好きになっているんだなって。振り返ってみると、高校時代も同じパターンでした。私に興味を示してくれる人には全く心が動かず、逆に冷たい態度を取る人や、明らかに脈のない人にばかり惹かれていました。

皆さんも、似たような経験はありませんか?「なんでいつも報われない恋ばかりするんだろう」って。実は、これって意外と多くの人が抱えている悩みなんです。心理学的には「回避型愛着スタイル」と呼ばれることもあるそうです。でも、私たちは別に病気なわけじゃありません。ただ、愛し方のパターンが少し偏っているだけなんです。

私の友人の美咲(みさき)も、同じような悩みを抱えていました。彼女は容姿も性格も申し分なく、男性からのアプローチは絶えません。でも、彼女が好きになるのはいつも「追いかけても追いかけても振り向いてくれない人」ばかり。そして、自分に好意を持ってくれる人には、どうしても恋愛感情を抱けないんです。

ある日、美咲は泣きながら私に電話してきました。「また同じことの繰り返し。私って何か欠陥があるのかな」って。その時、私は彼女に言いました。「美咲、それって実は自分を守ってるんじゃない?」

実際、心理学の研究によると、「好きになってくれる人を好きになれない」という現象には、いくつかの理由があるそうです。まず一つ目は、自己肯定感の低さ。「こんな私を好きになるなんて、何か裏があるに違いない」「本当の私を知ったら、きっと離れていく」そんな思い込みが、無意識のうちに相手を遠ざけてしまうんです。

二つ目は、支配欲求。追いかける側にいるときは、自分が主導権を握っている感覚があります。でも、相手から好かれる立場になると、なんだか受け身になったような気がして、不安になるんです。恋愛において「追いかける側」でいたい、という無意識の欲求が働いているのかもしれません。

三つ目は、過去のトラウマ。昔、誰かに深く傷つけられた経験があると、「また同じように傷つくかもしれない」という恐怖から、相手の好意を受け入れられなくなることがあります。これは一種の防衛反応なんです。

私自身、思い当たる節がありました。中学生の時、初めて付き合った彼氏に「実は罰ゲームだった」と言われたことがあります。その時の衝撃は今でも忘れられません。以来、誰かに好かれても「本当に?」という疑いの気持ちが先に立つようになったんです。

でも、これって本当にもったいないことですよね。せっかく素敵な人が自分を好きになってくれているのに、その気持ちを受け取れないなんて。私もそう思い始めて、少しずつ自分と向き合うようになりました。

まず試したのは、日記をつけることでした。毎日、その日の出来事と、そのときの自分の感情を記録していきました。すると、面白いことに気づいたんです。私は、相手から好意を示されると「怖い」「逃げたい」という感情が真っ先に湧いてくることが分かりました。

次に、カウンセリングを受けてみました。最初は抵抗がありましたが、話していくうちに、自分の中にある「愛されることへの恐怖」が見えてきました。カウンセラーの先生は言いました。「あなたは愛されることを恐れているのではなく、愛を失うことを恐れているんですよ」

確かに、その通りでした。好きになってくれる人を受け入れるということは、いつかその愛を失うかもしれないリスクを背負うということ。それが怖くて、最初から関係を築かないようにしていたんです。

でも、考えてみれば、追いかける恋だって同じリスクはあります。むしろ、片思いの方が辛いこともありますよね。それなのに、なぜか私たちは「追いかける恋」の方を選んでしまう。きっと、そこには「まだ手に入れていないから、失うものがない」という安心感があるんでしょう。

美咲も同じような気づきを得たそうです。彼女の場合は、「完璧主義」が原因でした。自分に好意を持ってくれる人を受け入れるということは、自分も相手に対して完璧でいなければならないというプレッシャーを感じていたんです。

「でも、恋愛って完璧じゃなくていいんだよね」美咲はある日、そう言いました。「お互いの欠点も含めて愛し合えるのが、本当の恋愛なのかも」

私たちは少しずつ、でも確実に変わっていきました。まず、「好きになってくれる人」に対する見方を変えることから始めました。相手の好意を「重荷」ではなく「贈り物」として捉え直すようにしたんです。

具体的には、相手の良いところを積極的に見つけるようにしました。「この人のここが素敵だな」「こんなところが魅力的だな」そうやって、相手の魅力に目を向けることで、少しずつ心が開いていきました。

また、「完璧でなくてもいい」ということを自分に許すようにしました。相手が自分を好きになってくれたのは、完璧だからではなく、ありのままの自分に魅力を感じてくれたから。そう考えると、少し楽になりました。

実は、ある研究によると、長続きするカップルの多くは「お互いに好意を持ち、それを受け入れ合う関係」だそうです。片思いから始まった恋愛よりも、相思相愛から始まった恋愛の方が、結婚に至る確率が高いという統計もあります。

つまり、「好きになってくれる人を好きになる」ことは、実は幸せな恋愛への近道なのかもしれません。もちろん、誰でもいいわけではありません。でも、せっかく自分に好意を持ってくれている人がいるなら、一度じっくり向き合ってみる価値はあるはずです。

私の場合、変化は徐々に訪れました。ある日、職場の同僚から食事に誘われたとき、いつものように断ろうとした自分に気づきました。でも、ふと立ち止まって考えたんです。「この人、悪い人じゃない。むしろ、すごく誠実で優しい人。一度くらい、デートしてみてもいいかも」

そのデートは、思いのほか楽しいものでした。相手は私の話をよく聞いてくれて、笑顔が素敵で、一緒にいて心地良かったんです。「あれ?私、この人といると楽しいな」そう感じた瞬間、何かが変わり始めました。

もちろん、すぐに恋に落ちたわけではありません。でも、少しずつ、相手の良さが見えてきました。そして気づいたら、私も相手のことを「好き」だと思えるようになっていたんです。

美咲にも素敵な出会いがありました。彼女は長年片思いをしていた人をきっぱり諦めて、自分に好意を寄せてくれていた大学時代の友人と再会しました。最初は友達としての付き合いから始めましたが、徐々に相手の魅力に気づいていきました。

「昔は全然意識してなかったけど、この人、本当に私のことを大切にしてくれてるんだなって」美咲はそう言って微笑みました。今では、その友人と幸せな関係を築いています。

でも、誤解しないでください。「好きになってくれる人を好きになれない」という気持ちは、決して悪いことではありません。それは自分を守るための、大切な防衛機制でもあるんです。大事なのは、その気持ちと向き合い、理解すること。そして、必要に応じて少しずつ変えていくことです。

私たちが陥りやすいもう一つの罠は、「ドラマチックな恋愛」への憧れです。映画やドラマでは、障害があればあるほど愛が燃え上がるように描かれますよね。でも、現実の恋愛はもっと地味で、静かで、それでいて深いものです。

「好きになってくれる人との恋愛」は、確かにドラマチックさには欠けるかもしれません。でも、そこには安心感と、お互いを思いやる温かさがあります。それこそが、長続きする愛の形なのかもしれません。

最近、私はよく思うんです。「愛される」ということは、実はとても勇気のいることだって。相手の好意を受け入れるということは、自分の弱さも含めて、すべてをさらけ出すということですから。

でも、その勇気を持てたとき、私たちは本当の意味で成長できるのかもしれません。「好きになってくれる人を好きになれない」という悩みは、実は「もっと深く愛し、愛される準備をしなさい」という心からのメッセージなのかもしれません。

私の祖母がよく言っていました。「恋愛は、お互いが同じくらい好き合っているのが一番よ」って。若い頃は「そんなの面白くない」と思っていましたが、今ならその意味がよく分かります。

バランスの取れた恋愛には、お互いへの尊重と、対等な関係性があります。どちらかが追いかけ、どちらかが逃げる関係では、本当の幸せは見つけられません。

もし今、「好きになってくれる人を好きになれない」と悩んでいる人がいたら、一度立ち止まって考えてみてください。その人の、どんなところが嫌なのか。本当に相手が問題なのか、それとも自分の中にある恐れが原因なのか。

そして、もし後者だと感じたら、少しずつでいいので、その恐れと向き合ってみてください。カウンセリングを受けるのもいいし、信頼できる友人に相談するのもいい。日記をつけて自分の気持ちを整理するのも効果的です。

変わることは怖いかもしれません。でも、変わらないことの方が、もっと怖いかもしれません。せっかくの素敵な出会いを、自分の恐れのせいで逃してしまうなんて、もったいないですよね。

私は今、あの職場の同僚と幸せな関係を築いています。最初は「好きになれるかな」と不安でしたが、今では「この人と出会えて良かった」と心から思っています。

美咲も、大学時代の友人と結婚を前提にお付き合いをしています。「追いかける恋も楽しかったけど、愛し愛される関係の方が、ずっと幸せ」と彼女は言います。

「好きになってくれる人を好きになれない」それは、多くの人が抱える悩みです。でも、それは乗り越えられる壁でもあります。大切なのは、自分と向き合い、少しずつ心を開いていくこと。

愛されることを恐れないでください。それは、あなたが成長するためのチャンスかもしれません。そして、本当の幸せへの第一歩かもしれません。

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