玄関のドアを開けようとして、鍵が見当たらないあの焦り。初めて行く街で地図を広げる時の不安。そして、誰かを好きになった時の胸の高鳴り——。
私たちの人生には「初めて」がたくさんあります。その中でも、恋愛という「初めて」は、特別な意味を持ちますよね。なぜなら、それは自分の心と体、そして他者との繋がりに関わる、とても個人的で重要な経験だからです。
20代になっても恋愛経験がないと、「自分だけが取り残されている」と感じることがあるかもしれません。SNSには幸せそうなカップルの写真が溢れ、友人たちは恋バナに花を咲かせる。そんな中で「私だけが…」という孤独感を抱くのは、とても自然なことです。
でも、実はあなたは一人じゃありません。
コロナ禍を経た今、20代の約4割が「交際経験なし」というデータもあります。また、初めての恋愛に踏み出す年齢は人それぞれ。「遅い」「早い」の基準など、本当はどこにもないのです。
この記事では、同じような状況から一歩を踏み出した人たちの実体験と、心理カウンセラーとして多くの相談に乗ってきた私の視点から、恋愛への第一歩を応援するヒントをお届けします。
なぜ恋愛経験がないのか?その理由を考えてみよう
「なぜ私には恋人ができないんだろう…」
この問いを自分に投げかけたことはありませんか?まずは、その理由を少し掘り下げてみましょう。自分を責めるためではなく、現状を理解して前に進むためです。
「出会いの場」の変化
昔は学校や職場が自然な出会いの場でした。しかし、今の時代は違います。リモートワークが普及し、大学もオンライン授業が増え、日常的に新しい人と出会う機会そのものが減っています。ある調査によれば、20代の過半数が「最近半年間、新しい人との出会いがない」と回答したそうです。
つまり、出会いがないのは「あなたの問題」ではなく、「時代の変化」によるものかもしれないのです。
コミュニケーションの変化
「初対面の人と話すのが苦手…」 「どう接していいかわからない…」
こんな悩みを持つ人も多いでしょう。実は、デジタルネイティブ世代は、テキストでのコミュニケーションには長けていても、対面での会話に不安を感じる人が増えています。これも自然なことです。なぜなら、私たちはSNSやメッセージアプリを通じてコミュニケーションする時間の方が、対面で会話する時間より長くなっているからです。
私の友人は「大学時代、LINEではスムーズに会話できるのに、実際に会うと言葉が出てこない」と悩んでいました。でも、それは特別なことではなく、多くの人が経験していることなのです。
自己肯定感と恋愛の関係
「自分なんて誰も好きになってくれない」 「もっと〇〇な人になれば…」
自己肯定感の低さが恋愛に踏み出せない理由になることもあります。完璧な自分になってから恋愛しようと思っていませんか?実は、これは鶏と卵のような関係なのです。恋愛を通じて自己肯定感が高まることもあれば、自己肯定感が高いから恋愛に積極的になれることもあります。
どちらが先でも構いません。大切なのは、「不完全な自分」でも恋愛していい、と自分に許可を出すことかもしれません。
リアルな体験談:彼らはどうやって第一歩を踏み出したのか
理屈では分かっていても、実際にどうすればいいのか迷うものです。ここでは、かつて恋愛経験がなかった人たちが、どのように最初の一歩を踏み出したのか、リアルな体験談をご紹介します。
ケース1:趣味を通じて自然に ~23歳男性・大学院生の場合~
研究漬けの毎日を送っていた彼は、女性と話す機会がほとんどありませんでした。いつも一緒にいるのは同じ研究室の男性ばかり。「このままじゃいけない」と思いつつも、どうしていいか分からない日々。
転機は、友人に誘われて始めたボルダリングでした。
「最初は全く乗り気じゃなかったんです。でも、友達が『運動不足解消になるよ』って言うから、仕方なく行ってみたら、意外と面白くて。それに、ボルダリングって初心者同士で教え合うことも多いんです。そこで同じ初心者の女性とペアになって…」
彼女と自然に会話が生まれ、回を重ねるごとに距離が縮まっていきました。
「研究の話とか、堅苦しいことじゃなくて、『この壁、どうやって登ったらいいですかね?』みたいな、その場の話題から始まったんです。だから緊張しなかった。それに、何か共通の目標があると、自然と応援し合う関係になれるんですよね」
半年かけてゆっくり距離を縮め、初めての交際に至ったそうです。
「趣味を通じてなら緊張せずに話せる」という気づきが、彼にとっての転機でした。恋愛を目的にしていなかったからこそ、自然体でいられたのでしょう。
ケース2:肩書きを外した場所で ~26歳男性・社会人1年目の場合~
「合コンでは毎回失敗していました。話そうとすると緊張して、何を言えばいいか分からなくなって…。結局、お酒を飲みすぎて変な人になるか、黙りこくってしまうか、どっちかでした」
彼が変えたのは、出会いの「場所」です。
「友人に相談したら『肩書きのない場所で会ってみたら?』とアドバイスされて。つまり、『出会いを求めている男性』『出会いを求めている女性』という肩書きがない場所。それで、料理教室に通ってみることにしたんです」
料理教室では、みんなが「料理を学びたい人」という共通の目的を持っています。そこには「異性と知り合いたい」というプレッシャーがなく、自然に会話ができる環境がありました。
「作業を通じて自然に会話ができたんです。『このニンジンの切り方、合ってますか?』とか、本当に些細なことから。でも、その積み重ねで徐々に話せるようになって」
彼は料理教室で知り合った女性と交際するようになりました。今では「結果を求めすぎない場が合っていた」と振り返っています。
ケース3:デジタルツールを活用 ~24歳女性・事務職の場合~
「私はずっと『自然な出会い』にこだわっていたんです。映画みたいに、本屋で偶然手が触れ合うとか、電車で目が合うとか…でも、3年待っても何も起こらなくて」
彼女が選んだのは、マッチングアプリでした。
「最初は抵抗がありました。『出会い系』というイメージがあって。でも、友人が『今は普通だよ』と背中を押してくれて。実際に使ってみると、メッセージのやり取りから始められるので、いきなり対面で緊張することもなく、会話に慣れていけました」
彼女にとって、マッチングアプリの良さは「相手の趣味や価値観が事前に分かる」点だったそうです。
「初対面だと何を話していいか分からないけど、プロフィールを見て『この人は映画が好きなんだ』とか分かると、話題が見つけやすかった。あと、メッセージでやり取りしてから会うので、ある程度相性が分かった状態で会えるのも良かったです」
今では半年以上付き合っている彼氏がいるそうです。
「アプリって『恋愛経験ゼロでも始められる』ツールだと思います。私みたいに緊張しいな人でも、少しずつ慣れていけますから」
ケース4:共通の専門分野から ~28歳女性・看護師の場合~
「夜勤や残業が多くて、出会いどころか自分の時間もほとんどなかったんです。周りからは『婚活しなよ』と言われるけど、疲れてるときに見知らぬ人と会って会話するなんて、想像するだけで疲れちゃって…」
彼女の転機は、職場の先輩に誘われた医療系の勉強会でした。
「正直、出会いを求めて行ったわけじゃなくて、キャリアアップのためだったんです。でも、グループディスカッションで他病院の男性と同じグループになって。専門的な話から始まったので、普段の会話より緊張せずに話せたんです」
共通の専門分野があると、初対面でも話しやすいものです。彼女は「専門分野の話から始まったので、気楽に話せたのが良かった」と言います。
「仕事の話から始まって、徐々に趣味の話とか、プライベートな話もするようになって。今思えば、『同じ分野で頑張ってる人』という共通点があったから、親近感が湧きやすかったんだと思います」
1年経った今、二人は婚約を考えているそうです。
恋愛を始めるための5つのヒント
これらの体験談から、恋愛経験がない人が最初の一歩を踏み出すためのヒントが見えてきます。ここでは、具体的な5つのポイントをご紹介します。
「出会いの場」を戦略的に選ぶ
体験談からも分かるように、どこで誰と出会うかは非常に重要です。特に、恋愛経験がない人にとって、いきなり「合コン」や「婚活パーティー」のような明確な出会いの場は、プレッシャーが大きすぎるかもしれません。
代わりに、自分の興味や強みを活かせる場所を選んでみましょう。例えば:
- 趣味のサークルやコミュニティ(ボルダリングジム、読書会、料理教室など)
- 勉強会やセミナー(業界の知識が活かせる場所)
- ボランティア活動(同じ価値観を持つ人と出会いやすい)
- ボードゲームカフェや山登りなど、自然と会話が生まれる環境
私の友人は「登山サークルがおすすめ」と言います。「山を登っている最中は、みんな自然と助け合うし、頂上で同じ景色を見ると一体感が生まれる。それに『次はどの山に行く?』という次回の約束も自然にできる」とのこと。
重要なのは、「恋愛」を前面に出さない場所を選ぶこと。そうすれば、自然体でいられますし、仮に恋愛に発展しなくても、新しい趣味や知識、友人ができるという副産物があります。
「練習」の機会を作る
いきなり好きな人と上手く話せると思わないでください。人間関係は筋トレと同じで、少しずつ鍛えていくものです。
まずは、日常の中で小さな「練習」の機会を作りましょう:
- コンビニのレジで店員さんと一言二言会話する
- カフェで注文するときに少し話を広げてみる
- エレベーターで隣になった人に軽く挨拶する
こういった小さな成功体験を積み重ねることで、「人と話すことへの恐怖感」が少しずつ薄れていきます。
ある男性は「最初は勇気がいったけど、スーパーのレジで『今日は暑いですね』とか言ってみたら、店員さんが笑顔で返してくれて。その小さな成功体験が自信になった」と話していました。
恋愛に限らず、コミュニケーションは練習で上達するのです。
デジタルツールを活用する
現代ならではの恋愛の入り口として、マッチングアプリやSNSなどのデジタルツールも有効です。特に、対面でのコミュニケーションに不安がある人には、テキストベースのやり取りから始められる点がメリットです。
ただし、いきなり「恋人募集」モードで始めるのはハードルが高いかもしれません。ある女性は「最初は『趣味の写真を撮りに行く仲間募集』モードで練習した」と言います。共通の趣味を通じた緩やかなつながりから始めるのも一つの方法です。
また、友人の紹介でLINEやSNSでつながり、まずはオンライン上でやり取りを重ねてから会うというステップを踏むのもおすすめです。
「マッチングアプリも最初から『デート』を目的にするんじゃなくて、『まずはカフェで話してみませんか?』くらいの軽い気持ちで始めるといいよ」というアドバイスもありました。肩の力を抜いて、一歩ずつ進んでいくことが大切です。
「共通点」を重視する
体験談にもあるように、趣味・仕事・価値観など「共感できる要素」があると、初対面でも話が広がりやすくなります。
特に最初は「何を話せばいいんだろう…」と不安になりがちですが、共通点があれば自然と会話のきっかけが生まれます。だからこそ、自分の興味や強みを活かせる場所で出会うことが重要なのです。
ある男性は「アニメが好きだということを隠さずプロフィールに書いたら、同じアニメファンの女性からメッセージが来た。普通なら緊張して話せないタイプなのに、好きなアニメの話になると自然と言葉が出てきた」と振り返っていました。
恋愛において「共通言語」があることは、とても心強いものです。
焦らない時間軸を持つ
恋愛経験がないと、「早く恋人が欲しい」という焦りが生じることもあるでしょう。しかし、その焦りが逆効果になることも少なくありません。
ある男性は「1回の出会いで結果を求めず、『年間で10人と食事に行く』という数値目標にしたら気が楽になった」とアドバイスしています。つまり、一回一回の出会いに「これで恋人ができなきゃ」というプレッシャーをかけるのではなく、長い時間軸で考えることが大切なのです。
「出会いから交際までに半年かかった」「週1回のサークル活動を3ヶ月続けて初めて2人で食事に行った」という体験談もありました。焦らずじっくりと関係を育んでいくことも、恋愛の一つの形なのです。
恋愛経験ゼロで不安になったときに思い出してほしいこと
いろいろなヒントを紹介してきましたが、それでも「私にはできないかも…」と不安になることもあるでしょう。そんなとき、思い出してほしいことがあります。
完璧な始め方なんてない
「最初から上手くいく恋愛なんてない」と言っても過言ではありません。経験豊富な人でも、新しい恋愛は毎回手探りです。なぜなら、相手が変われば関係性も変わるからです。
ある女性は最初のデートをこう振り返ります。「緊張しすぎて、コーヒーをこぼしちゃったんです。最悪だと思ったけど、彼が『俺も緊張してる』って笑ってくれて。その正直さで逆に親近感が湧いた」
完璧を目指さなくていい。失敗も含めて、それが「あなたの恋愛物語」の一部になるのです。
「恋愛経験ゼロ」は個性であり、欠点ではない
「恋愛経験がないことを隠さなきゃ」と思っていませんか?しかし、正直に伝えることで関係が深まるケースも多いのです。
ある男性は「最初は隠していたけど、勇気を出して『実は初めての恋愛なんだ』と伝えたら、彼女が『じゃあ、一緒に色々経験していこうね』と言ってくれた。それがすごく嬉しかった」と話しています。
あなたの「初めて」を大切にしてくれる人こそ、一緒にいる価値のある人なのかもしれません。
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