「今日も電話する?」
恋人からのそのひと言に、なぜか胸がざわつくようになったのは、いつからだっただろう。
かつては心が弾んだその誘いも、いまでは少しだけ、いや、正直に言えばかなりの「プレッシャー」になっている。恋人との電話。大切な時間のはずなのに、それが「苦痛」と感じてしまう自分に、戸惑っている人は少なくないはずだ。
この気持ち、もしかしたらあなただけじゃない。むしろ、恋人との関係が深まるにつれて、同じような悩みを抱える人が増えているのが今の時代のリアルなのかもしれない。
なぜ、愛する人との電話が苦しく感じるのか。今回は、その理由と背景、そして少し前向きなヒントを探っていこう。
時間を奪われる感覚がじわじわと積み重なる
社会人でも学生でも、私たちの日常はやることに追われがちだ。朝から晩まで仕事、授業、課題、付き合い、家事、趣味…。そんな慌ただしい中、毎晩1〜2時間の電話となると、正直なところ「時間が足りない」と感じる瞬間があるのは当然だ。
「今日は早く寝たい」
「少しだけひとりでボーっとしたい」
「読みかけの本の続きを楽しみたい」
そんな小さな願いすら後回しにして、「毎晩電話しないと不機嫌になるから…」とスマホを手に取る。その積み重ねが、やがて大きな精神的な重圧となってのしかかってくるのだ。
それは、恋人を大切に思っていないからではない。むしろ、大切に思うからこそ、相手をがっかりさせたくない、悲しませたくないという気持ちが働く。でも、それが「義務感」に変わってしまった瞬間から、電話というコミュニケーションは本来の意味を失ってしまう。
「また同じ話…」会話のネタが尽きていく不安
毎日の電話というのは、思っている以上に話題が必要だ。最初のうちは、昨日のデートの話、週末の予定、過去の思い出など、いくらでも話せたはずなのに、だんだんと「話すことがない」という状態に陥ることがある。
「今日何したの?」
「うーん、特に何も…」
このやり取りが3日続くと、不安になる。「こんな感じで続けてていいのかな?」「相手、退屈してないかな?」と。沈黙が増えるたびに、「何か話さなきゃ」と無理やり話題をひねり出す。でも、それって本来、楽しい会話じゃない。
とある20代女性はこう話す。
「彼氏が毎晩電話したがるけど、私は仕事で疲れてるから、正直しんどいんです。最初は楽しかったけど、最近は『今日何した?』の繰り返しで、話すことがなくて気まずくて…。断ると不機嫌になるから、義務で話してる感じですね。」
こういった「繰り返しの会話」と「断れない空気」が、精神的な消耗につながっていくのだ。
「ちゃんと話さなきゃ…」というプレッシャーに押しつぶされる
誰かと話すというのは、本来、気持ちを楽にする行為のはずだ。しかし、恋人との電話が「義務」や「確認作業」になってしまうと、その通話時間はまるで「試験のような場」になってしまう。
ある30代男性は、こう語る。
「遠距離の彼女と毎日電話してたんですけど、話すことがなくなって、だんだん苦痛に。彼女は『声聞かないと不安』って言うんですけど、俺はゲームや趣味の時間も欲しくて…。電話が“やらなきゃいけないこと”になって、楽しめなくなったんですよね。」
恋人を安心させたい気持ちと、自分の自由時間を確保したい思い。その間で揺れるのは、ごく自然な感情だ。それでも「相手の期待に応えなきゃ」と無理をしてしまうと、次第に心が摩耗していく。
信頼と束縛の境界線が曖昧になるとき
電話が「愛の証」から「監視ツール」に変わってしまうこともある。これは本当に切ない話だ。
「誰といたの?」
「なんで返信遅かったの?」
「どこ行ってたの?」
こういった問いかけが毎回のように繰り返されると、電話の時間は「楽しい会話」ではなく「事情聴取」になってしまう。
20代の女性はこう話す。
「彼氏が嫉妬深くて、電話のたびに“誰といたの?”って聞いてくるんです。最初は心配してくれてるのかなって思ってたけど、だんだん“監視されてる”って感じて…。電話の着信音が鳴るだけでドキッとするようになりました。」
恋人同士にとって信頼は土台となる大切なもの。しかし、それが「確認」や「束縛」に変わった瞬間、安心感は不安に飲み込まれてしまうのだ。
どうしたら、この苦しさを乗り越えられるのか?
答えは、意外とシンプルだ。
まずは、自分の気持ちに正直になること。「しんどい」と感じる自分を責めないでほしい。大切なのは、疲れている自分を受け入れること。そして、その気持ちをパートナーに誠実に伝えることだ。
「最近、仕事が忙しくてちょっと疲れちゃってて…電話、毎日は難しいかも」
「無理して話すより、お互い元気なときに楽しく話したいな」
そんな言い方でいい。責めるのではなく、共有する。相手もまた、あなたの本音に気づいていないだけかもしれないのだから。
ルールを決める、距離を調整するという知恵
・通話は週3回まで
・時間は30分以内を目安に
・話題が尽きたら無理に続けない
そんな風に、お互いが心地よく続けられるペースを話し合ってみるのもひとつの手だ。
また、コミュニケーションは何も電話だけではない。LINE、メモ、ボイスメッセージ、手紙…。言葉を交わす手段は、たくさんある。どれも、相手を思いやる気持ちが込められていれば、それだけで充分だ。
“会話”は、心を通わせるための手段であって、義務ではない
忘れてはいけないのは、「好きだから話したい」という気持ちと、「話さないと不安」という気持ちは、似ているようでまったく違うということ。
前者は能動的な愛、後者は受動的な依存だ。どちらが良い悪いではない。でも、二人の関係が前向きでいられるためには、「会いたい」「話したい」という気持ちが自然と湧いてくるような、そんな心の余白が必要だ。
電話が辛くなってきたとき、それは「別れ」のサインではない。むしろ、「もっとよい関係を築くためのタイミング」かもしれない。
話すことが減っても、沈黙が増えても、あなたが「安心できる」関係なら、それはきっと愛の形のひとつ。
大切なのは、言葉の数ではなく、心の距離。
今日も、あなたがあなたらしくいられる関係でありますように。
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